前回、「面接用スライドを公開した結果、全部見せます!」というブログを書きました。
あのブログ公開から、約1週間でスライドの閲覧数が24万回から29万回に5万回も増えました。すごい。なんでも公開してみるものですね。
さて、今回は予告の通り、公開に至った経緯や、大変だったことについて書きたいと思います。
実際のスライドはこちら。見たことある人は読み飛ばしてください。見たことない人はぜひ見てね。
スライド公開前の課題感
1.いい会社だと思うけど、イマイチ伝わってなかった
なかの人達からは「いい会社だと思う」という声が多かったのですが、それが外部に伝わっている感じがしませんでした。
具体的には以下のようなことを伝えたいと思っていました。
- 事業がとても順調に伸びている
- ワクワクするような今後の展開がある
- オープンで透明性のある経営
- 現場に大きな裁量があり、ボトムアップでいろいろなことが決まる
- 事業成長にあわせて昇給できる
- 昇給できる制度があり、昇給させる気概があり、昇給の実績もある
ではなぜ伝わっていなかったか?
たぶん、他の会社も似たようなことを採用サイトやWantedlyに書いていて、求職者の人からみると上辺の表現に見えるんだと思います。
私自身も「アットホームな職場です」「圧倒的な成長ができる職場です」という文字だけの求人を見ても、何も響かないどころか「なんとなくヤバそう」と思ってしまいます。
実は当時から面接用のスライドは存在していたのですが、その資料も上辺な内容でした。
2.給与が低いという噂を払拭したかった
SmartHR社には月給が一律35万円の時期がありました。サービス公開から約1年半、社員が15名前後のころまではその状態でした。(もちろん今は違います。念の為)
その時期に選考を受けてくださった人から伝わっていたのだと思いますが、以前は「給与が低い」と噂されることがありました。
また、無謀にもその時期に「転職ドラフト」というサービスを利用してしまい、「オファー金額やたら低くない?」という噂に拍車をかけていました。
※ 日本の平均給与水準並ですが、IT業界で中途採用中心の会社としては相対的に低いため「低い」と表現しています。
3.面接官が増え、説明内容にブレが出始めた
事業拡大にともない、選考の数がふえると、各部署からさまざまな人が面談や面接にアサインされるようになりました。
結果、求職者の方に伝わっている内容にブレが出始めていて、期待値コントロールを間違えて事故がおきそうだなという不安を感じていました。
4.面談の時間や、面接の時間をもっと有意義にしたい
面接中に「交通費は支給されますか?」とか「社会保険ってありますか?」など、こちらからすると「あたりまえじゃん!」と思うような質問をされることがありました。
とはいえ、まだまだ「スタートアップ = 労働環境が悪い」というイメージをもっている人が多く、書いてないと不安になるんだろうなと思いました。わかりやすい場所に書いたほうが良さそう。
また、「休暇」や「報酬」については「面接中に聞くと印象が悪くなる」という悪しき社会的風習があるように感じます。聞きにくいことも、こちらから書いておいたほうが良さそう。
公開までの経緯と、 気をつけたこと
そんなこんなで「面接用のスライドをつくって公開しよう」と決まりました。スライド自体は私がKeynoteで作成することに。
その事自体を決めたのは2018年の1月ごろ。しかし実際に公開できたのは2018年の8月ごろでした。7ヶ月もかかってしまった。
これは忙しくて遅くなったのではなく、様々な準備をする必要があり、時間がかかりました。
1. 実績が貯まるまで公開を待つ(中途半端な実績だと伝わらない)
公開を決めた2018年初頭は、まだ過去に「2回」しか昇降給の機会がなく、平均年収も500万円ちょっとでした。
これでは「給与が低いという噂を払拭したい」という目的も達成できなさそうですし、「今後も事業成長にあわせて給与水準を上げていく意志が本当にあるのか?」という疑念を完全には払拭できないなと思いました。
そのため、3回目の昇降給を決定する2018年7月まで公開を待つことに。
もちろん先にスライドを公開して、あとから内容をアップデートすることもできるのですが、公開のタイミングが一番話題にしてもらえることは目に見えていたので、最適なタイミングまで待つことにしました。
実際のスライドはこちら↓
※ グラフを見やすくするために3回分の昇降給しか掲載してませんが、実際にはこれまでに5回の昇降給が行われています。昇降給は1月と7月の年2回です。
2.社内と社外の期待値をそろえる必要がある
外向けに「いい会社だよ!」と言うことは簡単です。実態が伴ってなくても言えます。
意外とこの視点って抜けがちなのですが、外部に向けてスライドを公開するということは、内部の人の目にも触れることになります。
目に触れるどころか、彼らにスライドを使って会社の説明してもらう必要があります。そこに嘘があると、たぶん効果はプラスになるどころかマイナスになる。
「実態が追いついていないのに、将来の昇給モデルや昇給イメージだけを公開すること」は、「なかの人を平均年収 400万円で雇用しながら、求人サイトには年収400〜1200万円と書いているようなもの」だと思います。
実態を伴わせることはもちろんですが、中と外の期待値をあわせることも重要です。
私達は給与テーブルとセットで「給与レンジごとの人数分布」も公開しています。これは「公平さを無視した高額のオファー」や「採用したときのまま安い給与で放置」をやっていないことの証明でもあります。
また、入社後の「評価」「昇降給」が納得できないものであれば、中と外の期待値はどんどんズレていってしまいます。給与テーブルと人数分布を公開するからには、納得のいく評価をし続けること。少なくともその決意が不可欠です。
3.上辺にならないよう、事実を積み重ねる
冒頭でも書きましたが、世の中には耳障りのいい言葉が溢れています。上辺だけの言葉ではなにも伝わりません。
なので、写真や数字を交えたファクトを積み重ねてスライドをつくっています。
4. 制度の裏にある「会社の考え方」を伝える
福利厚生のスライドで伝えたいことは、「こんなに福利厚生があるよ!」ではなく、次の「福利厚生の考え方」のスライドに書いてある会社の考え方です。
福利厚生のスライドだけ見せられても、多分「ふーん」「数が多いですね」「◯◯があるんですね」くらいの感想にならないと思います。
そうではなく制度の考え方を伝えることで、「ボトムアップで決まるフラットさ」「合理的な意思決定」「スピーディーな意思決定力」を伝える為の1つのファクトになっているかなと思います。
5. 「どれくらい事業が順調に伸びているか?」をわかりやすく
ユーザー数の推移や、解約率は重要な指標ですが、それだけは本当に伸びているかは伝わりません。売上を公開することが一番シンプルかもしれませんが、ネット広告代理事業の売上(粗利 5〜20%)と、SaaSの売上(粗利80〜90%)は売上だけで比較できるものではありません。
私達は、「海外のユニコーンSaaS企業の、初期成長スピードとの比較」を使っています。
自社の事業特性にあった、わかりやすい比較対象を探してみるのも手です。
6. 推しポイントを明確にする
このスライドを公開してからよく言われることNo.1ですが、「マネしようと思ったけど何も出せるものがなかった」ということです。
うちの場合は「オープンさ」「フラットさ」「遊び心」という会社の文化にもなっている要素を多く盛り込んでいます。
ちょっとメタっぽいんですが、給与テーブル公開も「オープンさ」を伝えるためです。給与水準は、おそらく外資系企業やメガベンチャーには負けていますが、それを公開すること自体が武器です。
自社の「推しポイント」はなんですか?
まとめ
面接用のスライドを公開するということは、事業に例えると、あくまでマーケティングのチャネルを1つハックしたというだけです。すぐにマネされてしまいます。
重要なのは、マーケティングでインプレッションを増やすことよりも、良いプロダクト(≒会社、組織)をつくり、プロダクトの競合優位性(≒会社の推しポイント)を、しっかりとユーザー(≒求職者のみなさん)とコミュニケーションしていくことかなと思います。
しかし、インプレッションを増やすことも、それはそれで重要なので、今後もマーケティングのチャネルをハックし続けていこうと思います。
スライド公開のメリットは「面接用スライドを公開した結果、全部見せます!」にまとめてありますので、ぜひご覧ください。
世の中全体の採用が良くなると思うので、ぜひ皆さんの会社でも、スライドを作って公開してみてください。
我々からすればライバルが増えることになるのですが、「オープンさでは負けないぞ」という自負があるので、健全に闘っていきましょう。
また、弊社のスライドを見て、スライドを作って公開される皆さま、もし元ネタリスペクトの精神があれば、元ネタとして弊社スライドへのリンクを貼ってもらえると嬉しいです。弊社がとても喜びます🙏🏻
最後に・・・
SmartHR社では、ほぼ全職種で絶賛採用中です!
興味が湧いた人は採用ページをのぞいてみてください〜!
▼ 採用ページ(全職種) smarthr.co.jp
▼ 採用ページ(エンジニア向け) smarthr.co.jp
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あらためてスライドも置いておきますね^^