宮田昇始のブログ

Nstock と SmartHR の創業者です

Nstock の「30億円」資金調達によせて

資金調達について「これに全部書いてあるよ!」っていうブログを書きました。

記事の後半では、「宮田の Nstock のマイページ」のスクショも公開しているので、よければ最後まで読んでいってください。

余談ですが、カバー写真はオフィスから徒歩30秒の路地裏で、おしゃれコーヒー屋さん、クラフトビアバー、昭和の喫茶店などが立ち並んでる通りです。いい街なんですよね。

30億円調達しました

外部の VC さんから資金調達を実施しました。自分がエクイティ調達に関わったのは、SmartHR がユニコーン企業となった2021年以来、3年ぶりです。プレスリリースはこちら

調達額は30億円。投資家は WiL、Coral Capital、千葉道場ファンド、ALL STAR SAAS FUND、East Ventures の5社です。(敬称略)

30億円はすべて第三者割当増資です。着金後のいまが1番借入れをしやすいタイミングだと思うので、デットファイナンスについてはこれから考えます。

まず最初に感謝

投資家の皆さんは、全員が SmartHR の「シリーズ A(2016年)」に参加した投資家です。今回、Nstock でも再び投資していただけました。

バリュエーション(評価額)は非公開ですが、Nstock の実態からすると、かなり高めの金額です。会社の実績ではなく、ほぼ信用 & 信頼で出資してくださっていると思います。私たちのビックリするような提案に乗ってくれた投資家の皆さんには、本当に感謝です。

特に WiL 難波さんの意思決定は爆速で、WiL さんとしても過去最速のデューデリ & 投資委員会での決議だったそうです。具体的な日数を書けないくらい早かったです(笑)。普段は米国で投資されている WiL 伊佐山さんも「日本にもセカンダリーマーケットは絶対必要」と、強い期待をよせてくださいました。

それと、偶然にも Coral Capital さんと 千葉道場ファンドさんは、ともに4号ファンドを組成したばかり、且つ Nstock がその1号案件だそうです。なんかメモリアルでうれしいですね。

先ほど「全員が SmartHR のシリーズ A に参加」と書きましたが、East Ventures さんとALL STAR SAAS FUND さん(当時は BEENEXT )は、その更に前、シードラウンドから応援してくれています。もうだいぶ長い付き合いです。

また、調達でいろいろとサポートいただいた SmartHR CFOの森さん、経営管理統括本部の治さん、法務の小嶋さんにも、この場を借りてあらためてお礼をしたいと思います。

調達に関わった Nstock の 小澤さん太朗さん小西さんコバケンさん、それと顧問弁護士の山内先生も、お疲れ様でした!

強いて言えば「プレシリーズ A」かなあ

今回は、プレスリリースに「シード」「シリーズ A」などの記載を、あえてしませんでした。

しかし、メディアさんの取材をはじめ、思っていたよりも質問される機会が多く、聞かれた場合には「プレシリーズ A」と回答しています。

はじめての外部調達なので「シードで30億!」って言ったほうがインパクトはあるかもしれません。 

ただ、これまで SmartHR 社から3億円強のお金を借りてやってきている + 株式報酬 SaaS のプロダクトは PMF を感じている + セカンダリー事業でも金融商品取引業者になる準備を進めている + 社員数も35人を超えた、という状況だと、なんか「シード」って言っちゃうのは、ちょっとズルい感じするな〜と。

「A 種優先株を発行したラウンドだし、シリーズ A でいいかな」とも思ったんですが、最近はシードでも優先株を使うらしいのと、一般的なシリーズ A(ある程度再現性をもって事業を伸ばせるようになった段階)と比較すると、それも盛ってるようで気が引けるなあと。

という理由で「強いて言えば、プレシリーズ A 」と回答しています。

プレシリーズ Aって、本来は中途半端なラウンドで、望んでいる条件でシリーズ A を実施できなかったときに使う「つなぎ」的な表現だと思います。

ただ、プレシリーズ A という言葉のひかえめな雰囲気と、「評価額xxx億円でも自分たちにとってはプレ A だぜ」という野心的な雰囲気とで、Nstock らしいちょうどいい表現かなと密かに気に入っています。

宮田の株のシェアは?

Nstock は、これまでは SmartHR の100%子会社だったので、宮田の直接的なシェアは0%でした。

しかし、外部の VC さんから投資を受けて事業を大きくしていくなら、会社と投資家との利害を一致させるためにも、社長のシェアが0%のままというわけにはいきません。

今回の資金調達にあわせて、自分にも SO を2回に分けて付与します。社員向け SO 20% + 宮田向け SO 10%の枠を確保しているので、社員の皆さんへの付与が少なくなるわけではありません。

それに加えて、近日中に、第三者割当増資で宮田も1.5億円分の Nstock 株を購入する予定です。ちなみに、優先株ではなく普通株です。

サラッと書きましたが、1.5億円は人生で1番大きな買い物です。これは SmartHR のシリーズ E で自分の保有株をセカンダリーで売却したからできることです。いやあ〜セカンダリーって本当にいいものですね。日本のスタートアップ業界にちゃんと普及させたい。

SmartHR のシリーズ E についてはオウンドメディア「Stock Journal」で記事化しているので、そちらをご覧ください。

journal.nstock.com

SmartHR との連結はどうなるの?

結論、今回の資金調達では連結から外れません。ただ、将来的には連結を外れる選択肢も検討しています。

“もしかすると” ですが、3年後くらいに「もっと事業を伸ばすために、次は◯◯億円欲しい〜!」と Nstock が無邪気に言い出すかもしれません。そのタイミングと、SmartHR が黒字化を目指すタイミングが重なってしまったら、おそらく利害の一致は難しいでしょう。

一方、SmartHR 社のグループ会社である恩恵もめちゃくちゃ受けています。毎月のバックオフィス業務や、PC の手配をはじめとした情シス業務、契約書チェックや登記などの法務業務、オフラインイベントやオンラインセミナー配信などマーケ業務のサポート、特許や商標の取得まで、本当に多種多様なサポートをしてもらっています。本当にありがたい。これらを SmartHR 社と同じクオリティで自社でやるとなると、かなり大変です。

という感じで、将来のことを考えると離れたほうがいいかもしれないけど、いま受けている恩恵がすごいので離れられない。連結を外れるか否かも、現時点では「行くも、戻るも、どっちにでもいける」な状態になっています。どうなるか、結論は n 年後にわかるかな。

資金使途は、ほとんど人件費(たぶん)

基本的には、ほとんど人件費になると思います。しかし、最大でも150〜200名規模の組織におさえたいと思っていまして、そこまで急拡大にはならないかもしれません。(たぶん)

また、対象顧客がスタートアップ 数千社+ 上場企業 数千社と、そんなに広くありません。なので、SmartHR でやったようなテレビ CM をはじめとしたマスマーケもやらなそうです。(たぶん)

最近、オフィス移転しましたが、内装に1円もかけていないほぼ無課金の居抜きオフィスです。それでも十分にシュッとしてて清潔で、金融街 兜町という立地も、とても気に入っています。

3つの事業はどんな感じ?

Nstock では「3つの事業」を並行して進めています。進捗は下記のような感じです。

事業1. 株式報酬 SaaS 事業

いま1番先に進んでいるのは、株式報酬 SaaS「Nstock」です。

ちょうど1年前の2023年10月に有料化し、2024年上半期は月次30%で成長と、SmartHR の初期よりも良い伸びをみせています。社内的には PMF(プロダクトマーケットフィット)したぞという、確かな手応えを感じています。

導入企業には、レイターステージのスタートアップが多いですが、上場企業も数社いらっしゃいます。間もなく、上場後に欲しくなる機能(「SO の行使申請」「交付指図」など)も公開予定です。ご期待ください。

また、これは予想外だったのですが、社員数10〜30名くらいのスタートアップでの導入が思っていた以上に多いです。「社員に SO の価値を伝えたい」という理由での導入が多く、社員向け(SO の権利者向け)マイページが刺さっているようです。

このブログの最後で、宮田のマイページをチラ見せしているので、お楽しみに。

事業2. セカンダリー事業

非上場株式の取引所をつくるため、金融商品取引業取得の準備中です。ついにプロダクト開発も最近スタートしました。

先ほどの記事でも少し触れていますが、私達が準備しているプラットフォームのコンセプトは「社内取引所」です。例えば、「SmartHR専用の社内取引所」を作り、発行体であるSmartHRがある程度そこで発生する取引をコントロールできるというものです。

コントロールできるのは、「参加できる売主」「参加できる買主」「売買できる期間」「価格の設定」など、どこまで実現できるかは未確定ですが、上記のような機能を備えたものをイメージしています。

来年にはセカンダリーマーケット関連の規制緩和も予定されているので、2025年内には最初の取引を起こしたいと思っています。ちょうど1年後くらいにローンチできてたら間に合うかもしれない。

次の章で、日本でセカンダリー事業をやる意義を詳しく解説します。

事業3. スタートアップへの再投資事業

スタートアップで財を成した人が、次世代スタートアップに再投資できる仕組みをつくりたいと思っています。

日米ではエンジェル投資に600倍もの差があります。2018年時点で、日本で約43億円、米国では2.5兆円。日本のスタートアップ全体への投資金額が約1兆円なので、エンジェル投資だけでそれの2倍以上の規模感です。

大勝ちするスタートアップは「一見悪いように見えて、実は良いアイデア」という通説があります。エンジェル投資は寄付性が高く、他人のお金をあずかって投資する VC よりも「一見悪そうなビジネス」にもお金が供給されやすいです。

エンジェル投資の機会を増やし、リスクを分散し、スタートアップにお金だけでなく知識や経験も循環させられる。そんなプラットフォームを構想しています。

現在、別法人にてお金が集まるかニーズ検証中ですが、すでにお金が集まっており、ニーズは高そうです。

プロダクトは1〜2名のスモールチームでプロトタイピング中。Nstock の3事業のなかでは1番初期フェーズです!

その他の活動

スタートアップ業界をより良くする啓蒙活動の一環として、オウンドメディア「Stock Journal」を、創業初期から運営しています。

きのう、Nstock と同日に資金調達の記事を発表した令和トラベル 篠塚さんや、日米スタートアップに投資する VC を立ち上げた世界の福山太郎さんのインタビュー、実際にSOでキャピタルゲインを得た4名の匿名インタビューなど、独自の記事を公開しています。もっと記事を増やしていきたい。

税制適格 SO の契約書雛形キット「KIQS」は、これまでに1,500件以上ダウンロードされており、スタートアップ業界でよく使われる SO 契約のひな型になりつつあります。スタートアップ業界のトレンドにあわせた契約書で、リーガルチェック済み。無料なので、これから SO を発行される会社さんはぜひご活用ください。

という感じで、少しずつですが、複数の事業が形になってきました。どの事業も、スタートアップエコシステムをより良くする事業たちです。

日経新聞でニュースになった「セカンダリーマーケット」

先週、日経新聞でセカンダリーマーケットの話が出ましたね。Nstock のことも掲載いただきうれしいです。株式報酬 SaaS 事業に続く2つ目の事業として、セカンダリー事業への参入を予定しています。

セカンダリーマーケットの存在は、ユニコーン企業・デカコーン企業をつくるうえで、とっても大事だと思っています。

例えば、SmartHR の初期メンバー向け SO は2016〜2017年に発行しています。2016年当時に発行した税制適格 SO は10年で失効(※1)、つまりは2026年には失効してしまいます。

もし、政府による「スタートアップ育成5か年計画」がなければ「初期メンの SO を失効させられないので、グロース株全面安のこの状況でも、無理やり IPO するしかない……!」となっていたかもしれません。いや、きっとそうしていたと思います。

しかし、セカンダリーマーケットを整備していく流れのなかで、今年の4月に保管委託要件という法律が改正され、税的に不利な扱いを受けることなく税制適格 SO を未上場で行使して株式を取得し、売却できるようになりました。(※2)

法的には、スタートアップは SO の期限をそこまで気にせず、より良いタイミングで IPO を選択できるようになりました。しかし、それでは何年経っても IPO がなされず、リスクをとってくれた初期メンバーがいつまで経っても報われません。

そこで次に必要になるのが、非上場株式を2次流通させるためのセカンダリーマーケットです。Nstock では、時価総額が数百億円以上の非上場スタートアップをターゲットに、その準備を進めています。

セカンダリー事業についてもっと詳しく知りたい方は、詳しい記事が9/13(金)公開予定なのでチェックしてみてください!

※1)2023年4月1日以降に、設立5年未満の非上場企業が新たに発行する SO は期限が15年に伸びました。ただし、遡及適応は不可(過去のSOは10年のまま)
※2)遡及適応OK(過去の SO も条件変更可)だが、2024年内に対応が必要

最初は「反対」だった採用サイト

今回の資金調達にあわせて、Nstock の採用サイト を公開しました。

Nstock株式会社 採用サイト | https://recruit.nstock.co.jp/

実は、採用サイトをつくることに最初はちょっと反対だったんですよね。会社の実態以上に「ちゃんとした会社」に見えちゃうと、初期フェーズ人材からの応募が減っちゃうんじゃないかと。

ただ、完成した採用サイトを見て「めっちゃいい〜!たくさんの人に見てほしい〜!」と意見が180度変わりました。ぜひ見てみてください。

特に下記の職種を絶賛採用中です。

  • ソフトウェアエンジニア
  • QAエンジニア
  • コーポレートエンジニア
  • 法務(弁護士、事業めちゃやってもらいます)
  • CFO(財務責任者)

あ、そうそう、採用イベントを開催する(しかも3回も)ので、ぜひチェックしてみてください。
Nstock の 採用イベント一覧はこちら から!

楽しくやってる?

「宮田さん、いま楽しいですか?」

けっこう聞かれます。気にかけてくれてありがとうございます。とても楽しくやれています!

このブログは ICC の帰りの新幹線 + 資金調達祝いで兜町の定食屋「入金」を貸切した翌日に書いているんですが、自分はやっぱり初期フェーズが好きだし、向いていますね。

楽しい状態をキープできるよう、あんまり組織を拡大しすぎず、がんばります。

最後に(宮田の Nstock マイページをチラ見せ)

そうそう、資金調達が終わったので、株式報酬SaaS「Nstock」で自分のマイページにログインしてみました。1回目の宮田向けSO、そのキャピタルゲインが調達後の評価額で表示されています。

宮田の Nstock マイページ(1回目の宮田向けSOを付与後)

ゴクリ……!モザイクすみません、あまりにも生々しかったので……。

ただ、実際の数字を見るとあらためてやる気が出ますね。とある Nstock メンバーも「いまの評価額でもそこそこテンション上がるけど、評価額を10倍以上にしていかないと意味ねえ!」と、あらためてやる気を出してくれていました。

ちなみに、近日中に↓こんな画面にリニューアルされる予定です。

Nstock 導入に興味ある皆さま、お問い合わせお待ちしております (`・ω・´)ゞ

- 株式報酬SaaS Nstock | 株式報酬のポテンシャルを引き出す

nstock.com

イベント(オフレコ)の告知

いつもよりオフレコ多めのイベントを開催します。来てね!

9月19日(木) Nstock初の資金調達の舞台裏 〜いつもよりオフレコ多めに話します

nstock.co.jp

以上、最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

ちなみに、本日から2週間くらいにわたって、Nstock から毎日コンテンツリリースがあります。他のコンテンツもぜひチェックしてみてください〜!

最後にもう1回、採用サイトのリンク貼っておきます(`・ω・´)ゞ

recruit.nstock.co.jp