
Nstock社には「有給休暇30日」という制度があります。しかも、「入社初日」に30日付与です。なかなかパンチがある制度ですよね。
採用にも効きそうな制度ですが、これまではあえて大きく発信してきませんでした。
しかし、目下エンジニア採用を強化していることもあり、この「切り札」をきちんと紹介してみようと思い、今回のブログを書いています。
「有給休暇30日」制度の概要
有給休暇30日
仕組みはシンプルです。毎年「その年に使える有給休暇が30日」になるように設計されています。内訳は法定+特別休暇ですが、細かい仕組みは社員に意識させない設計にしています。
在籍期間に関係なく「30日」
一般的には「入社1年目は有給が少なく、長年在籍すると有給が増えていく」という制度が多いと思います。Nstockでは、入社1年目でも30日、入社5年目でも30日が毎年付与されます。
入社初日に付与
法定では「入社から半年間は有給0日」です。これは、家庭事情がある人にとっては「転職を考え直す理由」になり得ると思います。なので入社初日から有給が使えるようにしました。
「試用期間中に離職するリスクはどうするの?」という声もありますが、そこはミスマッチ採用してしまったこちらの責任でもあるので、そのリスクは受け入れることにしています。
繰越はナシ
繰越せるとなると、使い切ろうとせず繰越しちゃいますよね。みんなが有給取得しないと、結局は周囲に気を使って休みづらくなると思っています。なので、付与された有給休暇は「使い切るほうがお得」という設計にしています。
※ 細かい補足(読まなくてOK)
「法定の有給休暇」は付与から2年間繰り越せてしまいます。なので「法定の有給休暇」を先に使い切ってから「特別有給休暇」を取得してもらっています。余った「特別休暇」は繰り越しできません。もしも「法定の有給休暇」が余って繰り越した場合、翌年の特別休暇の付与日数を減らして、その1年に使える有給休暇が合計30日ピッタリになる仕組みになっています。
ちゃんと使われている? → かなり使われているよ
さて、有給休暇を30日にしても、ちゃんと利用されていないと意味がありません。
実態を把握するためにも、有給30日制度についても社内アンケートを実施してみました。まずはこちらのグラフをご覧ください。

- 25〜30日 36.7%
- 20〜24日 23.3%
- 10〜19日 40.0%
- 0〜9日 0.0%
なんと全体の6割が20日以上も有給を消化していますし、10日未満は0名です。すごい。 ここからは、「なぜ有給休暇30日を導入にしたのか?」その背景を書いていきます。
背景1: 私にとっての「福利厚生」の課題
私が福利厚生について感じている課題は、大きく4つあります
① 制度が増えるほど誰も把握できず、使われない
② 分散してパンチが弱くなり、採用にも効きづらい
③ 特定の人だけを優遇する制度は公平感を欠く
④ 福利厚生の議論は(私にとっては)ストレスフル
SmartHR 時代にも多くの制度があり、良い制度ばかりだった一方で、まさに上記の課題を何度も体験しました。詳しく解説します。
① 制度が増えるほど誰も把握できず、使われない
私が以前経営していた SmartHR でも、たくさんの福利厚生制度が作られました。どの制度も、社員の働きやすさ向上や、採用の魅力アップなど、ちゃんと起案者が考えてくれて、経営会議等での議論を経たうえで導入された制度です。
しかし、制度が増えすぎて、誰も全体像を把握できなくなっていました。
「こんな制度あったんだ」「どうやって使えばいいのかわからない」「制度が知られてないので、利用して休みづらい」という声も多く聞きました。
② 分散してパンチが弱くなり、採用にも効きづらい
福利厚生は単なるバラマキではありません。社員の皆さんの為になりつつ、ちゃんと会社の成長につながっていることが大事です。採用へのプラスの効果などはわかりやすいですよね。
しかし、制度が充実していけばいくほど福利厚生全体の特徴がなくなり、採用に効きづらくなります。
他社さんの良い事例だとNOT A HOTELさんの「最大100万円の旅費」はパンチがあり、採用にも効果がありそうですよね。
③ 特定の人だけを優遇する制度は公平感を欠く
例えば、「お子さん1名につき看護休暇を有給で◯日付与」っていう制度があったとします。めっちゃいい制度ですよね。こういう思いやりのある制度を考えて、ちゃんと導入している会社さんは、とてもステキだと思います。
一方、お子さんがいる社員さんは、そうじゃない社員さんに比べて休暇が多くなります。子供1人につき年間3日の休暇付与だとしたら、3人のお子さんがいれば年間9日です。もちろん「子供の看病より仕事のほうがぜんぜん楽だよね」とも思いますし、「子供3人いたら風邪やインフルの連鎖で9日でも足りないかも?」とも思います。
ただ、給与が成果に対して支払われるものだと考えると、同じ成果で同じ給与の社員さんがいたとき、お子さんの有無で「同じ成果、同じ給与、でも休暇が9日も違う」というのが、私はモヤモヤしちゃうんですよね。
みんな同じ休みの日数にする。少ないほうではなく、休みが多く必要な人にあわせる。そんな感じがいいなと思いました。
④ 福利厚生の議論は(私にとっては)ストレスフル
福利厚生の制度は、社員の人がボトムアップ的に起案してくれることも多いです。ただ、この議論は私にとってはストレスフルで、けっこうしんどい業務です。
多くの場合、皆さんよかれと思って提案してくれるんですよね。ただ、その提案を全部OKすることは難しいですし「NO」と言うことも、その理由を伝えるのにも神経を使います。
NOとハッキリ言えず、中途半端に「もうちょっと練ってから再提案して欲しい」とでも言おうものなら、検討してくれている社員さんや、会議に参加している人たちの時間がどんどん溶けていきます。
背景2: シンプルで、パンチがある制度が欲しかった
この価値観の転換点になったのが、NOT A HOTEL 濱渦さんとの対談でした。「尖った福利厚生を1つだけつくる」という考え方に、強く影響を受けました。
以下、Stock Journal での濱渦さんとの対談記事からの引用です。
濱渦:福利厚生をかんがえるとき、たとえばメルカリのような会社の福利厚生を真似しようと思っても、スタートアップだと難しいですよね。また、せっかく作るならNOT A HOTELらしさを感じられるものにしたい。そう考えた結果、「社員本人とその家族に年間最大100万円の旅費を支給する」という、たった1つの福利厚生を取り入れることにしました。誰にでも刺さる内容ではないかもしれませんが、きっと「旅好きな人」には刺さるだろう、と。
濱渦:あえて極端な福利厚生にした理由は、特徴を持たないスタートアップは採用においても不利になってしまうからです。福利厚生に関しては、組織の成長とともに必要な制度を加えていくスタイルが一般的ですが、僕としては制度を作るたびに予算を分散させるような気がしていてあまり良くないと感じていました。社員の要望するものをすべて福利厚生に落とし込むには限界がありますしね。
宮田:(中略)しかも、高額の旅費が出るという福利厚生があることで、普段よりいいところに泊まるインセンティブにもなる。これはNOT A HOTELの事業にも、間違いなくプラスの効果として返って来そうですね。
濱渦:まさにそれが狙いです!「せっかく旅をするならケチらないでほしい」「一泊でドカンとお金を使ってほしいし、なんならロマネ・コンティとか飲んでほしい」と伝えていますね(笑)。僕がいいと思ったホテルも紹介しています。NOT A HOTELのお客さまは、今まで経験したことがないことを楽しむためにいらっしゃいます。僕らが「経験したことがないこと」を楽しんでいなければ、いい提案はできません。そういった経験ができるように、会社としても後押ししています。そして、この福利厚生によって実際に“旅好き”な方々に選ばれるスタートアップになっているという自負もありますね。
きっかけをくれた濱渦さんには本当に感謝です。
インタビュー直後から制度を検討しはじめましたが、さすがに「いきなり30日にして大丈夫か……?」とビビってしまい、制度化できたのは記事の公開から数カ月後でした。当時は、社内のメンバーにも「誰か背中を押して欲しい」と言ってまわっていたのを覚えています。
背景3: スタートアップ2周目人材に刺さると思った
当初、Nstockはスタートアップ2周目の人材を採用のメインターゲットに据えていました。
有名スタートアップが、まだ無名だったタイミングで入社し、会社を大きく成長させ、M&AやIPOでキャピタルゲインを得た人たち。もしくは、惜しくもあと一歩でそれを逃した人たちです。
この人たちは、Nstockの事業テーマである「ストックオプション」や「セカンダリーマーケット」に興味をもってくれる可能性が、おそらく他の人たちよりも高いです。
加えて、スタートアップを成功させた経験やスキルは、即戦力としても期待ができます。
もっと具体的に2周目人材をイメージすると
- 現職には5〜10年くらい在籍、有給休暇も十分に付与されている
- 30代後半〜40代前半がボリュームゾーン、子育て世帯が半分くらい
- 現職の給与も業界平均より高く、人によってはキャピタルゲインを手にしている
人生において「お金 + 健康 + 時間の3つがそろうことは極めて稀」と言いますが、上記の2周目人材に当てはまる人が一番欲しいのは「時間」ではないだろうかという仮説を立てました。
また、「現職では、有給が毎年20日付与され、余っている有給も10日以上ある」という子育て世帯の求職者が、法定の「入社時点は有給0日、半年後に10日付与」という条件の会社に何の迷いもなく転職するイメージもあまり湧きませんでした。
そんな仮説から「入社初日から有給休暇30日」というアイデアが産まれます。
ちなみに、現在はスタートアップ2周目人材だけでなく、「いろんな2周目人材」に採用のターゲットは広がっています。
- スタートアップ2周目
- 1周目は金融業界で、2周目はスタートアップ業界で
- 1周目で極めた職種で、異業種で2周目のチャレンジ
余談ですが、最近は社内で「この "いろんな2周目人材採用" を採用のメインコンセプトに掲げよう」と言い張っているのですが、関係者にまだイマイチ刺さっていないのでがんばります。
背景4: 自分が欲しかった
いろいろ書きましたが、結局のところ「自分が欲しかった」という理由も大きいです。
SmartHR の社長退任後に、時間の価値を強く意識しました。本心を言えば、当時は早期リタイアも考えました。お金に余裕があり、健康で、あとは時間さえあれば人生でやりたいことを何でも実現できると思ったからです。
当時は「Die With Zero」を読んで、Die With Zero な生き方(楽しみを先送りせず、若いうちにやりたいことを経験をし、素晴らしい思い出を増やしながら、思い出とともに生きていく生き方)をしていくぞと心に決めたタイミングでもありました。
「ここで2回目の起業をすると “時間” が一気に減ってしまう……。」
Nstock は使命感に駆られて始めた事業です。スタートアップ業界にとって必要なのはもちろんのこと、日本に必要だと思うからまた起業したのですが「2回目の起業をしたせいで、人生で諦めることが増えるかもしれない……。」と悩むこともありました。
だからこそ、「使命を果たしながら、人生のやりたいことも諦めないための制度」として有給30日をつくりました。
※ 細かい補足(読まなくてOK)
ぼくは代表取締役なので本来有給制度はありません。「勝手に休めば?」と言われることもありますが、自分だけ休みまくるのは気が引けるので、スプレッドシートで30日ルールを自分にも適用しています。ちなみに昨年は28日も休みました!
これまでアピールしなかった理由と、 採用の効果
Nstockは各分野の実力者たちが短い時間でギュッと働く会社です。
「働き方がホワイト=仕事がゆるい」という誤解を与えたくなかったため、これまでは積極的には発信してきませんでした。そのため、「オファー面談で有給30日を初めて知った」という人も少なくありません。
また、ありがたいことに「Nstock 以外は選考を受けていません」「現職も好きなので、Nstock に転職するか、現職に残るかの2択です」という候補者の方が多いです。そのケースにおいて、有給30日は「現職に残る選択」に負けないための強い切り札になると思っていました。
「有給30日」がどれくらい内定承諾にプラス材料になったのか? データを見てみましょう。

- ほぼ影響なし(なくても内定承諾はしていた)…… 35%
- ある程度のプラス要因(うれしいな〜くらい)…… 52%
- 大きなプラス要因(なければ内定承諾していないかも?)…… 13%
う〜〜〜ん。 まあ、ちょっとは効果あるかな……?
「Nstockのミッションに共感して、Nstockしか選考を受けていない」という人が多いがゆえの結果なのか、「ゆるい会社なイメージにしたくないので、ちょうどいい結果」と考えるべきなのか。
このブログを機に社外にもアピールを少しずつ始めるので、今後の変化を見守りたいです。
やらないこと
今後、この制度について“やらないこと”を3つ明確にしておきます。
① 繰越しはしない
② 他の福利厚生を増やさない
③ 有給の買取制度は導入しない
それぞれ理由を書いていきます。
① 繰越しはしない
冒頭にも書きましたが、繰越せるとなると、使い切ろうとせず繰越しちゃうと思っているので、繰越制度はナシでいこうと思っています。
② 他の福利厚生を増やさない
これも既出ですが、他の制度を充実させることでパンチが薄くなったり、福利厚生の議論の時間やストレスが増えるので、やらないです。
③ 有給の買取制度は導入しない
アンケートをとった結果「その年に余った分を買取して欲しい」という声がありました。実は、そもそも有給の買取は法的にNGなので難しいです。(退職時の買取は法的にも可能だった気がする)
仮に法的に買取OKだったとしても買取制度は導入しなかったかなと思います。繰越と同じで、休みやすい空気づくりのためにも、休暇として活用して欲しいなと。
最後に
もしこの記事を読んで「Nstockで働くイメージが湧いた」という方がいれば、 まずはカジュアル面談からぜひ話しましょう。
特に募集中の職種をピックアップします。
採用サイトもよく出来ているので、ぜひ見てみてください〜!
Nstock株式会社 採用サイト | Nstock Recruit Site
日本語ラップ好きの皆さんへ
本日は休載です。
……というオチにしようと思ったのですが、どうしても紹介したくなりました。
EVISBEATS の「今日は休みだ feat. 田我流」、休日の BGM にぜひ。