こんにちは、Nstock / SmartHR の宮田です。
新会社 Nstock のロゴをつくったので、今回はロゴのコンセプトや、制作過程、ボツ案、やってよかった事などを紹介しようと思います。これからロゴをつくる際の参考にしてください。
ちなみに Nstock 社にはデザイナーさんがいないので、知り合いのデザイナーさんに依頼してつくりました。副業OKな会社にお勤めなのですが、シャイな方で名前は伏せて欲しいとのことでした。
なお、今回も最後に(一部で)人気の日本語ラップコーナーあります。
Nstock ロゴで重要視したこと
Nstock は、ストックオプションや株式がテーマの事業です。スタートアップの資本政策は、後戻りできない事柄が多く、顧客企業は失敗やハズレを引くことを他のジャンルよりも嫌がるであろうという仮説があります。
なので、「Nstock はこの分野の王道サービスである」という印象をロゴからも与えたい。というのが依頼のメインポイントでした。
まずは完成形を見てください。↓
完成したロゴは、スタートアップ企業であるという印象や、形骸化した株式報酬に切り込んでいくような印象もありつつ、何年も前からあったような王道感も出せているような気がしています。
いくつかの、金融系の王道な新興企業や、老舗企業のロゴと並べてみました。↓
デザイナーさんには「将来的に彼ら/彼女らに並び立つような王道感を出したい」「彼らの次世代版はどんなロゴがいいのかな?という感覚で作って欲しい」という話をしていました。個人の感想ですが、割とそういう印象になっていそうでは?
※ 印象をチェックするためにピックアップした企業さん達なので、彼らの競合サービスをつくるという意味ではありません。
シンボルのモチーフと、ロゴタイプの特徴
ロゴのシンボルマークです↓
シンボルマークは、「公正」を表した「=(等号)」をモチーフにしています。上と下のシェイプそれぞれの左端と右端に拡がりを持たせることで、「結果の平等」と「機会の平等」を表現しています。(詳しくは後述)
シンボルマーク単体でも Nstock ロゴだと認識できるように、中央のラインを斜めにするなど、抽象化された「N」にも見えるシルエットを取り込んでいます。Nに見えないって?感じとって。
ロゴタイプです。↓
ロゴタイプの解説は、デザイナーさんのコメントをそのまま引用します。
ロゴタイプは王道でストレートな印象にするため、よりスタンダードな形状のフォント「TT Commons Pro」をベースに作成。 今後の金融ドメインでの多面展開を想定し、価格表記時の可読性や、和文フォントとの親和性を重視して選択しました。
Fintech 系に発展させていく事業なので、数字が登場することも多いであろうと、数字との親和性も考慮したロゴタイプにしてくれました。天才?
ロゴの展開
名刺や封筒など紙媒体に使用するとこんな感じ。↓
封筒のデザインは、老舗の金融企業からの手紙のようにも見えませんか?私には見えます。
縦配置はこんな感じ。↓
経営者向けカンファレンスや、技術系カンファレンスにスポンサーとして協賛する際、縦配置のほうが使いやすいことが SmartHR 時代にも多かったです。そういう機会ではこちらの縦配置 ver を活用します。
アイコンや、プロダクト、サブブランドへの展開です。↓
スマホアプリのアイコンや、デスクトップの UI に展開しても、とてもしっくり来ます。
また、「N」のブランドを軸に色んな事業展開もできそうだとワクワクしています。
※ これらの事業をやるとは言っていません。
デザイン面でのチャレンジ
Nstock のロゴは、基本的には白/黒です。↓
SmartHR には「SmartHR Blue ( #00c4cc )」という「これを使えば SmartHR っぽくなる」という象徴的なカラーが存在しています。
今回はそういう独自のカラーがないので、Keynote でスライド1枚つくるだけでも、デザイン面での工夫やチャレンジが必要になりそうです。
逆に、白黒かつシンプルな形状のシンボルマークなので、Nike のロゴみたいに色々遊べそうだとも思っています。↓
ステッカーやTシャツのようなノベルティや、自社主催カンファレンスのような1回限りのロゴには、上記のような遊びを積極的に取り入れていきたいです。
完全リモートでつくったよ
今回は、社内の、しかも副業のデザイナーさんに依頼したので、「完全リモート 且つ 非同期」でのロゴ制作になりました。これは、私にとって初めての経験だったので、これまでと勝手がかなり違いました。
例えば、現在の SmartHR のロゴ制作はその真逆で、デザイナーの @bebe と隣の席で、リアルタイムにやりとりしながらつくりました。
※ SmartHRのロゴ制作過程に興味がある方は「リニューアルした SmartHR ロゴの作り方」をご覧ください。
また、今回依頼したデザイナーさんは、毎回「1案」しか提案しないスタイルで、それも新鮮な体験でした。慣れてないという意味では戸惑いもあり、「これがベスト」と言い切って提案してもらうことは、プロフェッショナルを感じて、信頼感も増しました。
何度かボツになったよ
これが Nstock ロゴの、記念すべき第1号案です。↓
お気づきでしょうか? Nstock ではなく Ustock です。
実は、Nstock は最初「Ustock」という名前で準備を進めていたのですが、商標で1件見逃しがあり、途中で「Ustock」の使用は難しいとの判断に至りました。
発覚したときには、既にロゴ制作中だったので、急遽「Nstock」に変更になりました。デザイナーさんまじゴメンなさい...…。
その後、私が完全リモート & 非同期でのロゴ制作に慣れていないこともあり、2個のボツ案を挟みました。
たった2個かと思われるかもしれませんが、毎回1案の提案 且つ 本業の合間での制作なので、けっこうな時間が経過し、難航しそうな空気が漂ってました。
Amazon 方式に変えたらうまくいったよ
デザイナーさんと協議し「このままだと迷走しそうなので “これを表現したい” というブレない軸をつくろう」という話になりました。
その時、デザイナーさんが見つけてくれたとある文章に「公正」という言葉があって、これはヒントになりそうだと思いました。
また、「(ロゴをつくる前に)ロゴの紹介文を先につくる」というスタイルを試してみました。これは、Amazon が新サービスを出すときにまずプレスリリースから書くというスタイルからヒントを得ました。
その時、私が実際に書いた文章がこちらです。↓
Nstock のシンボルマークは「公正」をモチーフにしています。
ロゴを検討するなかで目にした「金融取引における公正(fairness)の概念」という資料(※1)から、「公正」という概念について3つの示唆を得られました。
金融取引における「公正」とは?(※2)
- 機会の平等
- 結果の平等
- 弱者保護(ただし、過剰な弱者保護は全体の効率を落とし、弱者の利益すら損ねる)
現在の Nstock は、単なる業務効率化 SaaS に見えると思いますが、将来的に Fintech 領域で複数のサービスを展開していく構想があります。
金融サービスをデザインしていく上で重要になると思われる「公正」という概念について、得られた3つの示唆をロゴのシンボルマークに取り入れました。
1. hogehoge な形状 = 機会の平等を表す
2. hogehoge な形状 = 結果の平等を表す
3. hogehoge な形状 = 過度になりすぎない弱者保護を表す
(※1)日本銀行金融研究所の「金融取引における公正(fairness)の概念」という約20年前の資料です。当時は、「金融ビッグバン」と呼ばれた金融制度改革のなかで起こった規制緩和、技術革新、金融取引の自由化・複雑化など、変化の激しい時代でした。「この時代に、より重要性が増す法やルールを整備する上で1つの拠り所となるキーワードが『公正』なのではないか?」という考えのもと『公正』という概念の捉え方を整理することを試みた研究会の資料です。
(※2)本資料の結論と全く一致するものではなく、あくまでエッセンスとして重要だと解釈したものを挙げています。
デザイナーさんも「下記の部分、最高のインスピレーションになりそう」ということで、一気にスムーズに進むようになりました。
- hogehoge な形状 = 機会の平等を表す
- hogehoge な形状 = 結果の平等を表す
- hogehoge な形状 = 過度になりすぎない弱者保護を表す
「1」「2」は must で入れたいとオーダー。「3」まで入れるとコンセプトがボヤけそうな気がしたので want でオーダーしました。
改めて完成したロゴです。↓
結果として「1. 機会の平等」と「2. 結果の平等」だけ取り入れて、「3. 過度になり過ぎない弱者保護」については「やはり印象がブレそう」ということで今回はコンセプトに取り入れませんでした。
※ あくまでもロゴのコンセプトに入れなかったという話で、事業で弱者保護を軽視するっていう意味ではありません。
さっそくコーポレートサイトで使っているよ
完成したロゴは早速 Nstock のコーポレートサイトで活用しています。↓
左上のロゴもそうですが、サイトのトーンも、白黒を活かしてクールな印象にしています。背景動画の中央には薄く「\」のラインが入っていますが、よく見ないと気が付かないと思うので、よかったらアクセスして見てみてください。
余談ですが、コーポレートサイトで流している背景動画の元ネタは、SmartHRの旧コーポレートサイトで創業初期から使っていた渋谷の空撮動画です。旧東横線のホームがまだありますね。↓
当時のオフィスは、渋谷の桜丘にあるワンルームマンションでした。動画の右下、セルリアンタワーの裏手方面にあるのですが、惜しくも動画には写ってなかった。
「渋谷も、資金調達環境も大きく変わったけど、ストックオプションだけは何も変わってねえ」という意味を込めてこの動画を持ってきました。 ※信託SOの登場を除く
あえて、独自でエンジニア採用する理由
先日の Nstock 設立ブログから、複数名のエンジニアさんからカジュアル面談のご応募をいただきました。応募してくださった皆さん、ありがとうございます〜!
カジュアル面談で「本当にエンジニアさん0名ですか?」「実は SmartHR のエンジニアさんが手伝ってるんですよね?」と聞かれることがあるんですが、本当にいません。
なぜなら、SmartHR グループ内で貴重なエンジニア人材を奪い合ってもしょうがないと考えているからです。ご存知の通りエンジニア採用はますます厳しくなっていて、どの会社にとっても重要な経営課題です。比較的採用が順調な SmartHR 社ですら、開発リソースが充足しているとは言えない状況です。
それに、創業初期は採用のボーナスタイムだと思っています。これは SmartHR でも感じましたし、今回も「創業期にしか応募してくれないようなタイプだな〜」と感じる方に多くお会いしています。また、そもそも500名を超える会社と、10名未満の会社ではフィットするタイプも異なりそうです。
もちろん、SmartHR社から出向してもらう方が楽なのは間違いないのですが、そういった背景を踏まえて、あえて独自採用を選んでいます。
なお、Nstock 社でも技術面接だけは、SmartHR の新CEO(前CTO)の @masato_serizawa や、VP of Engineering の @t_morizumi に手伝ってもらっています。
また、SmartHRのプロダクト組織は、傍から見て本当にすごいなと思っています。エンジニアさんが入社し始めたら、SmartHR のスクラム開発や組織づくりなど、色んなノウハウを教えてもらおうと思っています。
なので、「親会社と仲悪いから独自採用している」とかではないので、安心して応募してください。
昨日オープンしたばかりの正社員の募集です!
いきなり選考はちょっと……という場合は。こちらのカジュアル面談からご応募ください!
ただ、現在は正社員として入社できる方に絞って選考をしていますので、「正社員として転職を検討している」「最初は副業や業務委託しかできないけど、nヶ月後から正社員としてフルコミットできる」という方に限らせてください🙏
https://open.talentio.com/r/1/c/smarthr-new-business/pages/56163?1open.talentio.com
※ 2022/03/22 追記 - 応募者多数につき、現在はカジュアル面談を停止しています🙏
急成長中の SmartHR の開発組織を体験してみたいという方はこちらをどうぞ!
ということで、ご応募お待ちしています〜!
日本語ラップコーナー
ツイッターを見てると、本文は読まずに日本語ラップコーナーだけ読んでる人もいるようです。それでいいよ。
ロゴのテーマにもつかった「公正」「平等」とかで考えたときにパッと浮かんだ 「RYKEY / JUSTICE feat.仏師」」です。
2020年6月に公開されたPVで、歌詞と映像でわかると思いますが「Black Lives Matter」についてのラップです。このテーマで、色のないPVもかっこいい。
RYKEY / JUSTICE feat.仏師(BUSHI)
↓一部抜粋
あの人は言った 私には 夢があるとか
俺たちも変わらず その夢を語りながら
明日歌う曲の 打ち合わせをするのさ
目の前にはいつも 前途多難な事柄
約束の場所には まだまだ届かないが
歌う事は辞めないでいるよだってこれから
騒ぎ出した世の中 には必要な言葉さ
身をもって教えてくれた 自由のあり方
1968年 4月4日
マーティンルーサーキング 撃たれた
死んでも生きてく意志なら
国をまた超え 時をまた超え
愛を超え NEVER DIE NEVER DIE
おわり