宮田昇始のブログ

Nstock と SmartHR の創業者です

社名やプロダクトのネーミング方法 (SmartHR と Nstock と失敗例)

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こんにちは、 Nstock / SmartHR の宮田です。

新会社 Nstock は、スタートアップ企業の皆さんを対象顧客にした事業です。なので、今後はスタートアップ経営に役立ちそうなネタもブログに書いていこうと思います。

今回は、社名やプロダクトの「ネーミング」について書きます。

社名 = プロダクト名にしたほうが良い

まず、最初に「社名 = プロダクト名」にしたほうがいい理由です。

SmartHR 社も、元々は「社名 ≠ プロダクト名」でしたが、2017年4月1日に 株式会社 KUFU から株式会社 SmatrtHR へと社名変更 しています。

その理由を書いていきます!

1. 説明コストが高い

KUFU も愛着がある社名ではあったんですが、当時は説明が本当にメンドウでした。

名刺交換のときも毎回「SmartHR という人事向けクラウドサービスを開発している株式会社 KUFU の宮田です」と言っていました。

名刺交換だけじゃなく、メール、電話、全ての対外コミュニケーションがこれで、しかも全社員がやっていました。このメンドウな説明を。

2. 新聞にプロダクト名が載らない(社名が載っちゃう)

事業が注目を集めはじめると、色んなメディアさんに掲載してもらえる機会が増えます。

しかし、経済系の新聞さんは「見出しには社名の記載が必要」というレギュレーションがあるそうで「KUFUが年末調整機能を公開。スマホで完結」という見出しになっちゃってました

「SmartHRが年末調整機能を公開。スマホで完結」と書かれたかった〜!

3. 展示会のブースで「社名」が掲示必須(しかも目立つ)

これは Yappli庵原さんからお借りした、とある展示会での Yappli さんのブースの写真です。当時の社名「ファストメディア」が一番上に掲示されています。

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展示会での Yappli さんブースの写真(2016年末ごろ)

この展示会のルールで、ブース最上部に社名ロゴ掲示が必須だったそうで、苦肉の策で社名ロゴ下に Yappli のロゴを掲示したとのこと。

「マーケ担当のメンバーに “イベント調子どう?” とDMしたらこの写真が送られてきて、これを見て社名変更を決心した。これまでで一番ひどい空間デザインだった。」と庵原さん。

これが決め手になり、2017年4月1日に「株式会社ヤプリ」へ社名変更されています。(いま気がついたんですが、なんと SmartHR の社名変更と同じ日!)

「社名と事業名の両方をブランディングする “2重コスト” から開放された瞬間」というコメントが象徴的でした。

4. 採用広報も "2重コスト" になっている

採用広報は、スタートアップにとってものすごく重要です。

これだけ魅力的なスタートアップが増えてきた昨今では、企業側が自社のこと発信しないことには、その存在に気づいてすらもらえません。

そんな状況下で、「社名」と「プロダクト名」の両方で採用広報するのは、2重コストになってしまってもったいないです。

「あ〜〜KUFUって、SmartHRを開発している会社だったんですね」
「SmartHRって、KUFUさんが開発してたんですね!」※

と、当時は何度も言われました!

※ KUFU の社名だけ知ってる珍しいパターン。社名の元ネタになっていたライムスターの「K.U.F.U」が好きで会社の存在だけ知っていた人や、当時のコーポレートサイトのデザインが好きで覚えてたという人が一部いました。

成功しないという訳ではないが…

もちろん、「社名 ≠ プロダクト名」だからといって成功しないということではありません。

PLAIDKARTE )さんのようにIPOしたスタートアップはいますし、10XStailer )さんや、LayerXバクラク )さんなど、現役で急成長中の若いスタートアップも存在しています。

ピボットや、早期に複数事業を検討しているのであれば、別々でもよいでしょう。しかし、そうでない場合は、縛りプレイをしているようなものです。

あなたの会社が1プロダクトで、これから勝負をかけるタイミングであれば、「社名 = プロダクト名」にすることを強くオススメします。

過去に失敗したネーミング

SmartHR 以前に開発していたプロダクトで、失敗したネーミングを紹介します。

ドメイン重視で決めちゃった

一昔前のインターネット業界あるあるだと思うんですが、プロダクトのアイデアを思いついたらまず最初に「ドメイン」を取得することってありましたよね……?

ぼくらが起業したときの最初のプロダクトは「エンジニアやデザイナーのスキルに関するポートフォリオSNS + 転職」というアイデアでした。

当時、SNSやポートフォリオ系サービスで流行っていた「.me」ドメインを軸に探して見つけた「skillsand.me(スキルと私)」というドメインを取得。ドメインありきで SKILLSAND というプロダクト名にしました。

事業自体も失敗だったんですが、私はなんだかプロダクト名を気恥ずかしく感じてしまっていて、自信持ってプロダクト名を言えなかったという苦い思い出があります。(ドメインはイケてたと思っている)

カッコつけて無駄にひねってしまった

2つ目の事業は、今で言うと、BOXILさんや、キーマンズネットさんのような SaaS などのIT製品の比較・クチコミサービスでした。

前回の失敗から学び、ドメイン重視ではなく、ちゃんと考えてネーミングしたプロダクト名は Yknot(ワイノット)でした。

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数年ぶりに見た Yknot のロゴ。なつかしい。

  • 「Y」 … 「IT製品」「ユーザー企業」「弊社」の三方良しを表す「Y字」
  • 「knot」 … ネクタイの結び目(knot、ビジネス、縁を結ぶ)
  • 「Why not ?」 … 賛同や、提案としての「Why not 〜?」とかけた
    • 「このサービスの感想聞かせてもらえる?」「Why not?(もちろん!)」
    • 「Why not use this service?(このサービスを使ってみませんか?)」

結果、事業は失敗しましたし、このプロダクト名だと、初対面の人は何系のプロダクトか想像できなかったようで、必ず最初にガッツリ説明が必要でした。

また、「Why not ?」はお洒落な言い回しだと思って気に入っていたんですが、否定的な意味でとらえる人も少なくはなく、その点でもイマイチだったかもしれません。

SmartHR のネーミング

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SmartHR の2代目ロゴです

シンプルでスタンダードが一番

SmartHR のときは「ドメイン重視で決めない」「カッコつけて無駄にひねらない」という過去の反省を活かして、めちゃシンプルにネーミングすることを意識

  • 「Smart」 ... スマートにするサービス
  • 「HR」 ... 人事・労務を

SmartHR という名前、またはロゴにソフトウェアっぽいニュアンスもあるのか、説明で苦労したことはあまりなかったです。

将来の事業展開も考慮した

最初は「入退社の手続き」だけしかないサービスだったんですが、「HR と言っちゃって大丈夫か? 広すぎないか?」という懸念もあったんですが、結果よかったです。

今では、「入退社」「雇用契約」「年末調整」などの手続き系だけではなく、「人事DB」「人事評価」「組織図」「社員名簿」「サーベイ」「分析レポート」など人材マネジメント領域にまでプロダクト群が広がっています。ネーミングから6年たって、名が体を表しはじめました。

「社保くん」にしなくて本当によかった

SmartHR 公開直前、ある有名VCの方から「 “SmartHR” はカッコよ過ぎる。マスに行くなら “社保くん” という名前に変えるべき」というアドバイスをもらいましたが、本当にそれにしなくてよかったです。社保くんという名称は、事業領域を狭めるだけでなく、採用もめちゃ苦労していたような気がしています…。

何より、当時のユーザー企業さん達は「ついに人事労務の領域にも先進的なサービスがやってきた!」と喜んでくれていました。結果論ですが、社保くんみたいなネーミングでは、先進性がないように感じてしまわれて、そもそもユーザー企業さん達に刺さってなかっただろうと思っています。

運良くドメインも空いていた

運良くドメインも空いていたので、smarthr.jpsmarthr.co.jp というドメインも取得できました!

SmartHR 公開直後、マネーフォワードさんや、リクルートさんに「ドメイン超いいな〜!ドメインだけでも欲しいな〜!」と言ってもらえたのは今でもちょっとした自慢です。

Nstock のネーミング

Nstock の由来

正式な社名は「Nstock 株式会社」で「エヌストック」と読みます。

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新会社 Nstock のロゴです。

Nstock の社名には下記のような意味を込めました。

  • 「N」

    • 上場申請期(N期)の会社
    • Next ユニコーン
    • Next ステージ
    • Nippon(日本)
       
  • 「Stock」

    • 株式報酬
    • ストックする

スタートアップ経営者や、IPO担当者の皆さんはよくご存知かと思いますが、上場申請期のことを「N期」と呼びます。

よく、経営者向けカンファレンスの会場等でも「御社いまNマイナスいくつですか?」「そろそろNマイナス2です」といった会話が挨拶のように交わされています。

  • 株式報酬で、スタートアップをNextステージに導く事業
  • 新規上場企業や、Nextユニコーン企業の株式が集まる場所
  • 海外機関投資家が日本の有望スタートアップを探す場所

そういう事業に育てていきたいという意気込みを込めて、この社名に決めました。

どうやって決まったか?

株なので「Stock」を入れるというのはすぐに決まりました。

あと、もう1つやりたかったことがあります。「GoogleX」「SpaceX」みたいにアルファベット1文字を入れることです。国内でも「10X」さんや「LayerX」さんなど、「X」を使っていてカッコいいですよね!

しかし、「StockX」という有名サービスが存在しているので、X は早々に断念。他のアルファベット1文字を探しはじめました。

最初は「Ustock」だった

「X」の次に真っ先に思いついたのは「U」でした。

「Ustock」か「stockU」で少し悩みましたが、「YouTube」や「Ustream」のように「あなたの株式」というニュアンスを強めたくて「Ustock」に。

  • 「U」
    • You … あなたの株式
    • Unicorn … ユニコーン企業
    • Update … スタートアップ業界をアップデート

と、現在の Nstock に込めている意味と、ほぼほぼ同じですね。

商標の問題でUstockは却下

という感じでしばらくは「Ustock株式会社」として1ヶ月くらい準備していましたが、商標の取得が難しそうとなり断念しました。

もちろん、最初に「商標検索のサイト」で調べてはいたのですが、「Ustock」で検索しても大丈夫だったのが「U-stock」(「U Stock」だったかも?)で検索すると、モロに被っている商標が見つかりました。

商標は、ちゃんと調べましょう!!!

すんなり「Nstock」に

Ustock が難しくなったので「U」に変わる他の1文字アルファベットで考えることに。

しかし、これはすんなり「N」に決まりました。Slack を見返したんですが、その間わずか5分。

前述の通り、Nstock は Ustock とほぼ同じ意味を込めれそうなので、名称が変わっても事業コンセプトがブレなそうだと感じたことに加え、上場申請期を表す「N期」とかけられる点も後押しになりました。

ちょっとひねったネーミングになっている気もするんですが、顧客がスタートアップ経営者や、IPOの実務担当者の人たちなので、なんとなく大丈夫な気がしています。

答え合わせはまた n 年後に!

余談: なんで「後株」に?

SmartHR グループ9社目にして、はじめての「後株」の会社です。

「前株と後株でメリット・デメリットありますか?」と経理や法務に確認したところ「特に無い。好みの問題」と言われたので好みで決めることに。

  • プロダクト名を先に言いたいから
  • ナショナル企業は後株多いらしい
    • トヨタ自動車株式会社
    • ソニー株式会社
    • 全日本空輸株式会社
    • 日本電信電話株式会社 etc...

という理由で後株にしました。

今後、後株の社名で困ることがあれば、またツイッター等に書きたいと思います。

2人目のエンジニア募集中です!

Nstock では、正社員のエンジニアさんを募集中です!

先日、1人目のエンジニアさんが内定承諾してくださったのですが、年内にあと4名ほど募集する予定です。私たちと一緒にチームをつくって働きましょう〜!

open.talentio.com

いきなり選考はちょっと……という場合は。こちらのカジュアル面談からご応募ください!

ただ、現在は正社員として入社できる方に絞って選考をしていますので、「正社員として転職を検討している」「最初は副業や業務委託しかできないけど、nヶ月後から正社員としてフルコミットできる」という方に限らせてください🙏

open.talentio.com

※ 2022/03/22 追記

  • 応募者多数につき、現在はカジュアル面談を停止しています🙏

大風呂敷を広げた「SmartHR」という社名が、現実になってきた急成長中の SmartHR 社で、急成長企業の開発組織を経験してみたいという方はこちらをどうぞ!

hello-world.smarthr.co.jp

ブログに写真を提供してくださった心優しい Yappli さんの求人も掲載しておきます。庵原さん、ありがとうございました〜!

yappli.co.jp

日本語ラップコーナー

今回は、SmartHR の旧社名の元ネタ「K.U.F.U」です!

www.youtube.com

↓ 一部抜粋

オレにも出来ると思って始めた、アイツよりマシだと思って始めた
始めてしばらくは天狗だった、しばらく経ってから面食らった

甘くないぞこのライムってのは、軽くないぞこのマイクってのは
通らないのかオレのこの声は、実らないのかオレのこの恋は?

そうか オレは天才じゃないんだ、逆に オレにゃ限界は無いんだ
その時目から 鱗が落ちた、正確に言うと 耳から落ちた

声が 無いならリズムで勝負、リズムが無いならら イズムで勝負
早口 オフビート 全て試した、決してならなかった誰かの手下

一語 一句に手間ひま掛ける、小さなステージに全てを懸ける
夢は 野を駆ける 山を駆ける、現実は寒さに拍車を掛ける

寒さの中で 己探した、寒さの中で 仲間が増した
仲間と共に 競って出した、ヴァイナルが全てをひっくり返した

今から思えばダサくてよかった、あのダサいヤツが最後に勝った
だから 今日は エコーも無しで、ダブルも無しでマッパ丸出しで

バカでも出来る フロウで殺す、バカでも出来る ライムで殺す
「オレにも出来る!」言ったなボウズ、許しはしないぜ三日坊主

キミの

武器はたゆまぬK.U.F.U. 武器はたゆまぬK.U.F.U.
武器はたゆまぬK.U.F.U. 武器はたゆまぬK.U.F.U.
常に研究 常に練習
知恵を結集し 君をレスキュー

おわり