宮田昇始のブログ

Nstock と SmartHR の創業者です

SmartHR社が面談で「現年収・希望年収」を聞かない理由

SmartHRの宮田です。

いま中国の深センからこのブログを書いています。深センすごい。

さて、SmartHR社では採用プロセスにおいて、求職者さんに「現年収・希望年収」を聞いていません。あえて聞かないルールにしています。

今回はそのことについて書いてみたいと思います。

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100人目の社員に贈呈されたキリ番ゲットTシャツ

昔は聞いていた

昔は聞いていました。だって内定承諾して欲しいからね!

選考にはメンバーの時間もかなり使ってますし、「年収が希望よりちょっと低かった」を理由に断られたら悔しいじゃないですか。

特に会社初期は、今と比べて採用力も弱く、喉から手が出るほど人が欲しかったです。

なので、外さないオファー金額にしたいと思い、当たり前のように現年収・希望年収を聞いていました。何より楽ですし。

このままではマズいと思った

2年ほど前「このやり方のままだと、いつか組織がギスギスするな」と感じました。

オファー年収が引きづられるんですよね。

現年収が高ければこちらのオファーも高くなるし、希望年収が低かったら低めになってしまう。

そうすると社内の給与がいびつになる可能性ある。

例えば、大活躍しているAさんと、あまり活躍できていないBさんがいたとします。しかし、前職年収や希望年収はBさんのほうが大幅に高かった。結果、大活躍のAさんのほうが年収が低い。こういうことが起こりえます。

いびつな状態が社内のあちこちにあったり、長く続くと、ギスギスの温床になり、足の引っ張り合いが始まる。

過去に働いていた会社では、そこかしこでギスギスが起こっていたので、それを避けたいと思いました。

年収を聞くのをやめた

いまから1年半ほど前の、2017年6月ごろから聞くのをやめ、弊社がオファーしたい金額で、オファーを出すようにしました。

現年収や希望年収を聞かずに、経験や能力、期待する役割、社内の水準と照らし合わせてオファー金額を決めています。

相手の希望を聞かずに年収を決めることは、内定承諾率の低下に直結します。決めることには一貫性や勇気も必要です。実は、希望年収を聞いちゃうほうがはるかに楽なんです。

しかし、それを上回るメリットがあります。

年収を聞かないメリット

なにより、ギスギスした雰囲気にならなったことが一番良かったことです。

社内に余計なギスギスがないので、メンバーは仕事や成果に集中でき、本人も会社もすごいスピードで成長していきます。

会社が成長した結果、従業員にも給与水準アップというかたちで還元できている。良い循環ができているように感じます。

予想外だったのは「ちゃんと評価ができる会社」「純粋に自分の能力を評価してもらっている」など、ポジティブなコメントももらえる点です。

先日入社した人事の @yabucccchi が下記のようなコメントをブログに書いてくれていました。

素で評価をしてもらえた。この会社はオファー時に前職の年俸を聞かず年俸を決めています。これが実際体感してみると、純粋に自分の能力を評価してもらっている感じがして気持ちの良いものでした。転職活動は自己評価と市場価値の照らし合わせだと思ってます。自己評価よりも少し上だったのでよりうれしかったです。恋愛で例えるなら外見ではなく内面で告白された気分とでもいいましょうか。こういうセオリーを超えたやり方をするところが好きです。

ybt.blog.jp

内定承諾率はどうなったか?

ざっくり、80%から70%に下がりました。

実は、もっと下がると思っていたので、想定よりは下がらなかったとホッとしました。

もちろん10%下がったことは残念ですが、いびつな給与が原因でギスギスするよりは全然マシだと思ってます。

ちなみに、入社時の年収は、下がるケースもあれば、上がるケースもあるようです。

ただ、優秀な人達が入社してくることが多いため、これまでは下がっているケースのほうが多いかもしれません。

可能性を信じてSmartHRに入社してくれた皆さんには、本当に頭が下がります。

どれくらい上がった / 下がったは、これまで聞いていなかったので、今後は入社後に聞いてデータ化していこうと思っています。(人事が既にやり始めてくれているようです。)

昇給できる仕組みや、マインドがあってこそ

初期のころと比較して、社内の給与水準は徐々に上がってきており、全社員平均で現在約600万円くらいです。(2年前は400万円ほどでした)

その為、こちらが出せるオファー金額も徐々に上がっており、内定承諾率を下げずに、いびつさを回避しやすくなっているかなと思います。

また、前職よりも入社時の年収が下がる人も少なくないと思います。そういった人が期待以上の大活躍すると、結局はいびつな給与になってしまいます。なので、活躍する人はきちんと昇給させ、いびつな給与になることを回避し続けることが大事だと考えています。

今後の課題

先ほども書いたのですが、入社後やオファー後に前職の年収がどれくらいだったのかヒアリングして、データ化していく試みもはじめています。

また、現年収や希望年収を聞かないフローが不躾な印象にならないよう、明確な意思をもってやっていることをちゃんと伝えていかないとなと思っています。

あとは、評価制度をしっかりやり過ぎてる感も否めないので、運用の負荷を下げたり、よりシンプルかつ双方が納得できる仕組みに改善し続けていきたいです。

今日はこの辺で!