宮田昇始のブログ

Nstock と SmartHR の創業者です

「たらい」が2回まわったら新ポジションの合図

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会社が大きくなって「たらい回し」が起きはじめた

先日、カスタマーサクセスのVPの高橋がこんなことを言っていました。

「たらいが2回まわったら新ポジションの合図」

SmartHRを公開してから3年11ヶ月。事業が大きくなり、組織も細分化。社員数は正社員だけでも150名を超え、細分化されたチームにも人が増えてきました。

社内ではときどき「たらい回し」が発生するようになってきました。

そもそも「たらい回し」とは?

そもそも「たらい回し」とは何か?ググってみました。

物事をよその部門に対応させて面倒事を回避しようとするさま、あるいは、行く先々で他の窓口へ行くように案内されなかなか目的を果たせないさまなどを意味する表現。
(参照元: たらい回し(たらいまわし)とは何? Weblio辞書

一般的な企業におけるたらい回しは、この「よその部門に対応させて面倒事を回避しようとするさま」という表現が合いそうです。

なぜ企業内でたらいが回るのか?

では、なぜたらい回しは起きるでしょうか? 私は以下のように考えます。

  1. 事業が大きくなり、新しい仕事が増える
  2. 新しい仕事は「責任者」が不明瞭
  3. そのため「遂行」と「評価(報酬)」がセットになっていない
  4. やる気ある人が、新しい仕事を遂行しても、評価されない
  5. 最初は良くても、だんだんとその仕事を避けるようになる
  6. 結果、新しい仕事は、ただの面倒事になり、たらい回しが起きる

たらいを回さない対策

シンプルに考えると、下記が実行できれば解決できそうです。

  1. 事業が成長して、新しい仕事ができたら
  2. 「責任者」を明確にして
  3. 「遂行」と「評価(報酬)」をセットにする

つまりは、新しい仕事ができたら、新ポジションを確立し、評価方法を定義してあげることで、たらい回しを防ぐことができそうです。

SmartHR社で回ったたらいの紹介

ここで、SmartHR社でたらいが回ったエピソードを紹介します。

背景

オンライン雇用契約などの新プロダクトが登場し、新しい仕事も増えました。しかし、次のようなことが不明瞭だったため、たらいが回ってしまいました。

不明瞭だったこと
  • 誰が新プロダクトの全体売上に責任を持つのか?
  • 誰が顧客へのメッセージを決め、Webサイトや営業資料に落とし込むのか?
  • 誰が機能開発の優先順位を決めるのか?(特にビジネス側の視点で)

そのため、営業、カスタマーサクセス、PM(プロダクトマネージャー)の中間地点にボールが落ちたような状況になり、たらいが回りました。

(具体例1)顧客へのメッセージを決め、営業資料に落とし込む

例えば、顧客へのメッセージを決めて営業資料に落とし込んでいく仕事。

営業メンバーの仕事かと思いきや、ちょっと微妙です。なぜなら、営業メンバーの評価は個人売上の比重が高めです。これらの仕事は、営業活動のためには重要ですが、個人売上ほどは評価には直結しません。

もちろん、「顧客がなにを求めているのか?」「こういうトークが刺さる」など、営業メンバーからの情報提供は不可欠ですが、その責任者が営業とは考えづらい。

すると、この仕事を他チームに渡したくなるのですが、カスタマーサクセスも、PMも、渡し先としてイマイチしっくり来ません。

(具体例2)新プロダクトにおける機能開発の優先順位決め

例えば、機能開発の優先順位づけ。

顧客満足を担うカスタマーサクセスの仕事のようでもあり、機能開発を担うPMの仕事のようにも見えます。また、両者が二人三脚で優先順位を決めたとしても、知らずしらずビジネス的な視点が抜け落ちしてしまうことも。

経営陣が巻き取るということもあるかもしれませんが、それでは権限移譲も進まず、何をするにもトップダウンの、スピードが遅い会社になってしまいます。

PMMのポジションをつくることに

この状況を打破するために「PMM(プロダクト・マーケティング・マネージャー)」というポジションを新設することに。発案は冒頭に出てきたカスタマーサクセスの高橋です。

当時の話を高橋さんに聞いてみました。

「PMMという言葉は知っていた」
「あらためて調べてみたら自社にドンピシャで必要なポジションだった」
「それっぽい仕事をしていた3名でPMMチームをつくった」
「ちなみに、PMMの概念としては、実は10年前からある」
「PMMに詳しく知りたい人はこのインタビューを読んでみてください」

www.wantedly.com

「こちらの名著も参考になるかも」


Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方 - Amazon

「PMMと、名前が似ているPMとの違いは、こちらのスライドもわかりやすいかも」

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プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングの違い(P7より)

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プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングの違い(P9より)

とのことでした。

PMMをつくった結果

PMMというポジションを新設した結果、下記のような効果がありました。

たらい回しが減り、意思決定が早くなった
  • 窓口が明確になり、たらい回しが減った
  • 各プロダクト毎に、売上責任を持つ人が明確になった
  • 責任者がつくことで意思決定が早くなった

PMMの評価については、査定のタイミングこそまだ来ていませんが、評価のプロセス自体は進んでいます。

いまのところいい感じです。

オンライン雇用契約は、本体より1.5倍のスピードで成長

発端となったオンライン雇用契約については、開発がスムーズになったことはもちろん、当時は燻っていたその売上も、いまではSmartHR本体の初期よりも1.5倍のスピードで成長しています。

経営陣がほぼノータッチで新プロダクト公開

先月公開したラクラク分析レポートですが、経営陣はほぼノータッチで、PMM中心に企画〜開発〜公開まで順調に進んでいます。

  • PMM(1名)
  • PM(1名)
  • デザイナー(1名)
  • エンジニア(3名)

早速、数件の契約もいただき、まずまずの滑り出しのようです。PMMすごい。

PMM募集しています!

SmartHR社では PMM を募集しております!

SmartHRと強いシナジーを持つ、新プロダクトに責任を持つ仕事です。

自らの決定が事業、プロダクトの方向性を決めます。

こんなチャレンジングな環境に興味がある方は、まずはカジュアルに話を聞きに来てみませんか?

▼PMM応募ページ open.talentio.com

PMMのいる環境で働きたいPMも募集しています!

▼PM応募ページ(※PMMじゃないよ) open.talentio.com

おまけ

SmartHR社には、臭いものにフタをせず、課題の存在をしっかり認識する文化があります。その結果、たらいが回る emoji が Slack に登場。日々、活躍しています。

▼たらい回し emoji (回転するアニメーション付き)

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▼用法

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▼最後に、会社紹介資料を置いておきます。